【相続した実家を売る】手続きの順番|相続登記・名義変更と遺品整理はいつ

【相続した実家を売る】手続きの順番|相続登記・名義変更と遺品整理はいつ

実家の鍵を開けると、父の遺品も母の荷物もそのまま。不動産会社からは「中身を片付けないと査定も売却も進みません」と言われたけれど、片付けの前に名義の話もあるらしい。結局、何から手をつければいいのか分からない——そんな状態で検索された方が多いのではないでしょうか。

実家が遠方だと、通えるのは月に1〜2回。その限られた時間をどこに使えばいいのか迷ったまま、半年、1年と過ぎてしまう。これは段取りが悪いのではなく、手続きと片付けが別々の窓口に分かれていて、全体像が見えにくいせいです。迷いながら進めている方がほとんどです。

筆者は名古屋で遺品整理・生前整理と買取査定に携わっており(実務4年目/古物商許可:愛知県公安委員会)、売却前のお宅に入ることが多い立場です。登記や税の判断そのものは司法書士・税理士など専門家の領域ですので断定は避けますが、「どの順番で動くと止まりにくいか」は現場からお伝えできます。

この記事でわかること

  • 相続した実家を売るまでの手続きの順番(相続人の確定→遺産分割→相続登記→売却相談)
  • 相続登記・名義変更はいつ必要で、2024年4月からどう変わったか
  • 遺品整理を登記の完了を待たずに始めてよい範囲と、先に確保すべき物
  • 相続放棄を検討している場合に、片付けへ手をつけてはいけない理由

相続した実家を売る手続きの順番は「名義を自分に移してから売却」

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最初に結論です。相続した実家の売却は、故人名義のままでは売買契約に進めない場合が多いです。現場でも、名義が故人のままだったために売却の話が止まってしまったお宅を見てきました。買主側も金融機関も、売主が所有者であることを登記で確認するためです。つまり順番としては、名義を相続人に移したうえで売却へ進むのが基本形になります。

全体の流れを整理すると、次のようになります。

順番 やること 主な相談先 遺品整理との関係
① 遺言書の有無を確認する 公証役場・法務局・司法書士 探す過程で書類の確保も進む
② 戸籍を集めて相続人を確定する 市区町村役場・司法書士 並行して進められる
③ 財産を調べる(不動産・預貯金・負債) 金融機関・司法書士 権利証や通帳の確保が役立つ
④ 遺産分割について相続人全員で合意する 司法書士・弁護士 形見分けの話もここで共有
⑤ 相続登記(名義変更)を申請する 法務局・司法書士 登記を待たず片付けは進行可
⑥ 査定・売却の相談をする 不動産会社 室内が空いているほど話が早い

ポイントは、⑤の登記が終わるまで片付けを止める必要はないということです。登記は書類と手続きの世界、片付けは現場の世界で、進行レーンが別だからです。遠方で月1〜2回しか通えない方ほど、この2つを並行させた方が全体が早く終わります。

なお、相続した不動産を売って利益が出た場合などには税の手続きが関わることがあり、相続税の申告が必要なケースでは「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」が期限です(国税庁タックスアンサーNo.4205 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm)。該当しそうな場合は、早めに税理士へ確認しておくと安心です。

相続登記・名義変更はいつまで? 2024年4月から申請が義務化

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期限は「3年以内」とされています

相続登記は長く任意とされてきましたが、2024年(令和6年)4月1日から申請が義務化されました。法務省の案内では、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務となり、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料が科される可能性があります(法務省「相続登記の義務化」特設ページ https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html)。

さらに、2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合は2027年(令和9年)3月31日までに登記する必要があります(同ページ)。「父が3年前に亡くなったまま名義を触っていない」というお宅は、ここに該当する可能性があります。

売却を考えているなら、期限より前に動く理由があります

義務化の期限は3年ですが、売却を予定しているなら、その前に動く実務上の理由があります。

  1. 名義が故人のままでは、売買契約や決済の段階で手続きが止まりやすい
  2. 相続人が高齢だと、話し合いの途中で新たな相続(数次相続)が発生し、関係者が増えることがある
  3. 戸籍の取り寄せは時間がかかり、申請準備だけで数週間〜数か月かかる場合があります

名義を放置したまま「売る前提」で片付けだけ進めると、順番が崩れることがあります

室内を空にしても、相続人全員の合意が取れていなければ売却の話は前に進みません。特に、相続人が複数いる場合に一人の判断で家財を処分すると、後から「勝手に処分した」と言われるきっかけになります。片付けを始める前に、相続人になり得る方へ一度共有しておくことをおすすめします。

遺品整理はいつから始める? 登記を待たず「先に確保する物」から

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片付けより先に、書類と貴重品の確保を

遺品整理は登記の完了を待たずに着手できますが、順番があります。最初にやるべきは「捨てること」ではなく、手続きに使う物を確保することです。具体的には次のとおりです。

  • 登記識別情報通知・権利証(登記の際の確認に関わります)
  • 固定資産税の納税通知書(不動産の特定に使われます)
  • 預貯金通帳・キャッシュカード・金融機関からの郵便物
  • 保険証券、年金関係の書類
  • 遺言書らしき封書(開封せず、専門家に相談するのが無難です)
  • 実印・印鑑登録カード・マイナンバーカード

これらは片付けの初日に、ひとまとめの箱へ入れて持ち帰ってしまうのが実務上のポイントです。作業が進むほど紙類はまとまって処分されやすく、後から探すのが難しくなるためです。

「まず捨てる」より先に、残す物だけ抜く

書類と貴重品を確保したら、次は物量です。素人の片付けで一番差が出るのは順番で、迷う物から触ると手が止まります。明らかなゴミを減らして見通しを作るのが先、残った物で判断するのが後です。

また、業者と一緒に「要る・要らない」を仕分けしながら作業すると、その時間ぶん料金が上がりやすくなります。残す物だけ家族側で先に抜いておき、残りを処分依頼するのが費用を抑えやすい進め方です。遠方で通う回数が限られている方は、1回の訪問で「書類確保」「残す物の抜き出し」まで終えておくと、その後を業者側に任せやすくなります。

💬 現場のひとこと

貴重品は、思ってもみない場所から出てきます。本の間からまとまった現金が出てきたこともありますし、丸まったティッシュの中から金の指輪が出てきたこともあります。高齢の方は「包んで隠す」のが癖になっとるんですわ。

だから本やアルバムは、1冊ずつパラパラやってから処分する。タンスは中身を出すだけでなく、引き出しの奥まで手を入れる。権利証も同じで、古い百科事典のカバーと表紙のすき間から出てきたことがあります。急がば回れで、紙類と小物だけは一度全部目を通してから捨てるのが結局早いです。

相続放棄を検討しているなら、片付けに手をつけない

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ここは注意が必要な論点です。実家に負債がある、老朽化が激しく手に負えないなどの理由で相続放棄を検討している場合、家財の処分や売却に手をつける行為は避けてください。

相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述すると定められています(裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)。一方で、民法921条は、相続人が相続財産を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めており(e-Gov法令検索「民法」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、放棄が認められなくなる可能性があります。

放棄を少しでも検討しているなら、片付け・買取・解体はいったん止めてください

「形見だけ持ち帰った」「売れそうな物だけ買取に出した」という行為が、後の判断に影響する場合があります。迷っている段階では物に触れず、先に弁護士・司法書士へ相談するのが安全です。どこまでなら触れてよいかは個別の事情で変わるため、自己判断は避けてください。

逆に、放棄を考えていないのであれば、遺品整理は早めに動いた方が有利です。空き家は時間が経つほど室内の劣化が進み、売却時の印象にも関わります。

実家の売却は仲介と買取の両方で査定を取る|後悔しない選び方

仲介と買取の違いを押さえる

相続した実家の売り方には、大きく分けて仲介と買取があります。どちらが向くかは、家の状態・急ぎ具合・相続人の人数によって変わります。

比較項目 仲介(買主を探す) 買取(不動産会社が買う)
売却までの期間 買主が見つかるまで時間がかかる傾向 条件が合えば期間が短くなる傾向
価格の考え方 市場価格に近づきやすいとされる 仲介より低くなる場合があるとされる
室内の状態 内覧があるため片付けの影響が大きい 現況のまま相談できる場合がある
向いている人 時間に余裕があり価格を優先したい 期間を区切りたい・遠方で通いにくい

数字の見え方は物件ごとに異なるため、どちらが得かを一律に言うことはできません。実務的に現実的なのは、仲介と買取の両方で査定を取って比べることです。1社だけだと、その金額が高いのか低いのかを判断する材料がありません。

相談先を間違えない

困りごと 相談先
相続人が誰かわからない/戸籍集めが大変 司法書士
相続人の間で意見が合わない 弁護士
相続登記の申請 法務局・司法書士
相続税の要否・譲渡所得の扱い 税理士
家の価格・売り方 不動産会社
家財の処分・買取 遺品整理業者・古物商

遺品整理業者を選ぶ際は、見積もりの取り方でも差が出ます。「50万円くらい」という提示が最低額なのか上限なのかで意味がまったく違うため、「最大でいくらになりますか」を聞いて、その金額でやり切ると言える業者を選ぶのが実務上のポイントです。見積もりの確認項目は遺品整理の見積もりで後悔しないための全知識に詳しくまとめています。

なお、相場からかけ離れた高額な追加請求、預けた鍵の紛失、着手や進捗の連絡がないまま作業が長引いた、といったトラブルが報告されています。鍵を預ける前に業者の情報を確認し、作業期間と連絡頻度を書面に残しておくと、こうした行き違いを減らしやすくなります。

見積もりを取ることは、処分を決めることではありません。今の状況を把握して家族で話す材料にするために取る方が多く、金額を知ってから進め方を考えても遅くはありません。相続登記や名義の確認を済ませたうえで、売却の選択肢を相談したい場合は、相続まわりをまとめて相談できる窓口があります。

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(運営:株式会社ネクサスプロパティマネジメント)

よくある質問

Q1. 遺品整理と相続登記は、どちらを先にやるべきですか?

同時並行で進められます。登記は書類の手続き、遺品整理は現場の作業で、互いの完了を待つ関係にありません。ただし、片付けの初日に権利証・通帳・納税通知書といった書類を確保しておくと、登記の準備がはかどります。相続人が複数いる場合は、片付けを始める前に一声かけておくと行き違いを防げます。

Q2. 名義を変えないまま売ることはできますか?

故人名義のままでは売買契約や決済の段階で手続きが進まない場合が多いです。また、2024年4月から相続登記の申請が義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が求められています(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html)。売却を考えているなら、登記を先に整えておく方が結果的に早く進みます。

Q3. 親が存命で施設に入っている場合、実家を売れますか?

所有者はご本人ですので、この記事で説明した「相続」の手続きとは話が変わります。ご本人の意思と判断能力がある状態でご本人が売却するか、状況によっては成年後見などの制度が関わる場合があります。売却の可否や進め方は個別事情で変わるため、不動産会社と専門家の両方へ早めに確認してください。片付けについても、ご本人の意向を聞きながら「残す物を決める」ところから始めるのが無難です。

まとめ|順番さえ決まれば、実家じまいは動き出します

この記事の要点

  1. 売却の前に名義を移す。 故人名義のままでは売買が進まない場合が多く、相続登記は2024年4月から申請が義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html)。
  2. 遺品整理は登記を待たずに始められる。 ただし順番があり、権利証・通帳・納税通知書・保険証券の確保が先。残す物だけ先に抜いておくと、依頼時の費用も抑えやすくなります。
  3. 売り方は仲介と買取の両方で査定を取って比べる。 相続放棄を検討している間は、片付け・買取・解体に手をつけないでください。

実家の片付けは、物を減らす作業であると同時に、気持ちの区切りをつける時間でもあります。作業を終えたお客様から「部屋も気持ちもスッキリしました」と言っていただけることがあり、遺品整理はそういう仕事なのだと感じています。進め方に迷っている間も、順番さえ見えていれば、月1回の訪問でも前には進みます。

まずは状況を把握するところからで十分です。相続登記や名義の確認が済んでいる、あるいはこれから整えるという段階であれば、売却の選択肢について相談してみるのも一つの方法です。

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ショウ

この記事を書いた人

ショウ

片付け・遺品整理の現場で実務4年目です。古物商としての買取の知見も交えて、後悔しない片付けのコツを発信しています。

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