遺品整理と費用

孤独死の原状回復費用の相場はいくら?損害賠償はどこまで義務がある?

孤独死で遺体の腐敗が進んでから発見された場合、賃貸物件であれば「原状回復」が必要になります。その費用について、多くの人が気になるのは以下の点でしょう。

この記事では、上記のポイントに加えて以下の知識も補足していきます。

これらの内容を読んでいただくことで、孤独死の原状回復費用について、すぐに役立つ相場から法律的なルールまで、幅広く理解できるようになるでしょう。

Contents

相場は39万円、保険が下りる金額は平均25万円

電卓

孤独死の原状回復費用の相場は、約39万円です。そして、そのうち保険が下りる金額は25万円が相場となります。データをより詳しくまとめると、以下のとおりです。

データの参考元は下の「日本少額短期保険協会」の資料です。

【参考】第3回孤独死現状レポート(一般社団法人・日本少額短期保険協会・PDF)

以下、それぞれのデータについて詳しく解説していきます。

平均損害額(相場)…39万円

まず、相場は約39万円です。これは資料の中で「平均損害額…391,541円」として書かれています。

あくまで「日本少額短期保険協会のデータ」ですが、同協会は下記のように「誰もが知っている大手グループの保険会社」が加入している協会です。

  • セキスイハイム不動産少額短期保険
  • SBI日本少額短期保険
  • イオン少額短期保険
  • 旭化成ホームズ少額短期保険
  • USEN少額短期保険

このように名だたる保険会社が参加しているため、同協会の調査結果は信頼性の高いものといえます。その相場で「39万円」ということです。

平均で下りる保険金…25万円

電卓

上記の相場のうち「大体いくら、保険金がおりるのか」ということも知りたいでしょう。これは「約25万円」です。

資料の中では「平均支払保険金」として「255,455円」という数字が書かれています。25.5万円なので、キリよく25万円と考えるのがいいでしょう。

損害額(工事費用)…0.7万円~415万円

原状回復の費用は、資料では「損害額」として表されています。この金額は、最大・最小でそれぞれ下のようになっています。

最大損害額 4,158,000円
最小損害額 7,560円

あまりの大きさに驚くでしょうが、最大の方は「415万円」と、400万円を超えています。一方、最小の方は7000円台と「ほぼゼロ円に近い」ものです(孤独死の原状回復費用としては、ゼロ円に近いといえます)。

保険が下りた金額…0.7万円~300万円

上のような被害のうち、どこまで保険金が下りるのか―。これは最大で300万円となっています。つまり、上の「415万円」の被害については「115万円は自腹」ということです。

保険に入っていたとしても、最大で切る自腹は「115万円」と考えるとわかりやすいでしょう。保険に入っていても、運が悪ければこれだけのダメージがあります。

(逆にいえば、保険に入りさえすれば「最悪のケースでも115万円で済む」ということです)

孤独死の原状回復費用は誰が払う?義務のある4つの順番

弁護士

孤独死の原状回復の費用は、下の順番で支払義務が生じます。

ここでは、それぞれの人の支払い義務について解説していきます。

①…相続人(配偶者・子供などの遺族)

最初に義務を負うのは相続人です。理由は、相続をすると「借金も背負う」ためです。

  • 原状回復は「借金」ではない
  • しかし「債務=支払い義務」ではある
  • その義務も引き継がれる

ということです。このため「相続をしたら」遺族が支払うことになります。

相続放棄をすれば、支払義務がない

遺族は「相続放棄」をできます。

  • 一切の財産を相続しない
  • 代わりに、義務も引き継がない

という選択です。これにより原状回復の義務はなくなります。原状回復だけでなく、故人が借金などをしていても、支払義務がなくなります。

(ちなみに、この相続放棄の威力は強力で、自己破産が認められない「税金の滞納」でも、相続放棄はできます)

②…連帯保証人(相続人が払えない場合)

保証人

相続人が支払いをできない、あるいは相続放棄をしたという場合は、連帯保証人に責任が回ります。連帯保証人の「連帯」とは「イコール」という意味で、本人と同じ責任を負うものです。

つまり、連帯保証人の責任は「故人とほぼ同レベル」に重いものです。「支払能力がまったくない」などの状態でなければ、払わないことは許されません。

逆にいうと「支払能力がない」なら、払わずに済みます。ただし、その場合も「持っているお金・資産はほぼ全額払う」ことになるため、一文無しとなります。

(もちろん、ほとんどの連帯保証人は「普通に払える」ので、このような例はあまりないのですが)

③…大家(相続人も管理会社も払えない場合)

もし、相続人も連帯保証人も払えない場合は、大家(賃貸人)が払うことになります。これも完全に法律的に確定しているわけではありません。しかし、過去の判例からいえば「大家の支払い義務は最後」となります。

④…保険会社(誰かが保険に入っていた場合)

ここまでに書いた三者のうち、誰かが「孤独死保険」に該当するものに入っていたら、保険会社が支払ってくれます。もちろん、

  • あくまで「保険会社がOKを出したら」の話
  • 全額とは限らない(保険会社が認めた範囲)

という制限つきです。しかし、ある程度払ってもらえるのは確かです。

遺族・保証人の賠償責任はどこまで?

弁護士

孤独死の原状回復や損害賠償については「どこまで、遺族や保証人に責任があるのか」という点が、しばしば論点になります。このポイントをまとめると、以下のとおりです。

それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。

原状回復は、遺族が支払う判例が多い

判例」の段落でも詳しく紹介しますが、原状回復については「遺族が支払う」判例が多く見られます。今後は違う判例が出る可能性もありますが、現状では「原状回復については、遺族・連帯保証人に支払義務がある」と考えるべきでしょう。

空室期間の家賃損失は、認められない判例が多い

空室

逆に「空室になってしまった期間の家賃の損失」の損害賠償までは、認められない判例が多くなっています。「リフォームの工事期間」など、孤独死が直接の原因となる期間についても、(大体)認められません。

理由は「わざと死んだわけではない」こと

これは原状回復についても言えることなのですが、故人は「わざと死んだわけではない」のです。そのため、原状回復についても本当に義務があるのか、議論されているところです。

そのため、それよりさらに上の「空室期間の家賃」までは、賠償責任が認められることはないといえます(一部の例外は除きます9。

孤独死が予想できたのに放置していたケースは別

例外は、たとえば以下のようなものです。

  • 故人には重大な持病があり、入院が必要だった
  • 入院しなければ、いつ死んでもおかしくなかった
  • それにもかかわらず、入院せずに暮らしていた

この場合「故人が孤独死する可能性は、本人や家族が意識していた」というべきでしょう。それで死んだのであれば「故意」ではなくとも「防げた過失」となります。

この場合、「善管注意義務違反」として、家賃の賠償責任も認められる可能性があります。

孤独死発生からの流れ・5つのステップ

ステップ

孤独死が発生してから原状回復をするまで「どのような流れで進んでいくのか」という点も気になるでしょう。その流れをまとめると、下の5つのステップになります。

  1. 警察に通報
  2. 現場検証
  3. 室内の状況確認
  4. 明け渡しに向けた手続き
  5. 原状回復・損害賠償の交渉

ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説していきます。

①…通報(生きている可能性があれば119番)

通報

孤独死のケースで「まだ生きているかもしれない」というときは、当然「救急車」を呼びます。救急隊員が駆けつけて、死亡が確認されたなどのケースでは、彼らが警察への連絡などの対応をとってくれます(少なくとも指示はしてくれます)。

「明らかに死んでいる」ときは警察に通報

「ひどい死臭がする」「窓などから遺体が見える」などのケースでは「明らかに死んでいる」とわかることもあるでしょう。その場合は警察を呼びます。

このときの通報ですが、急ぐ必要があれば110番、そうでなければ最寄りの警察署の「普通の電話番号」にかけましょう。110番は「今にも殺されそう」などの緊急事態にある人を救うための番号であり、

  • すでに死んでいる
  • しかも、おそらく事件性がない孤独死

という場合、110番の使用は控えるべきです。普通の電話番号でも、警察官が最寄りの交番などからすぐに駆けつけてくれます。

警察が来たら、一緒に部屋に入る

実は、警察を呼ぶのが必要なのは、主に「大家さん」です。たとえ孤独死が疑われても、大家さんが「勝手に部屋に入る」のは、後々面倒なことになるためです。

いわゆる「不法侵入」にはなりません。完全に死んでいたとしても「できるだけ早く腐敗を食い止める」ことは、故人ご本人にとっても、遺族の方にとっても良いためです(近隣への損害賠償などのリスクも小さくなるため)。

そのため、罪に問われることはありません。ただ「事情聴取が面倒になる」わけです。

これは警察としても「勝手に踏み込んだ人がいる以上、やらざるを得ない」ものです。「大家さんは100%シロ」とわかっていても、一応念のために詳しく調査する必要があるのです。

一方「最初から警察と一緒に入る」なら、聴取は簡単に終わります。入居者(故人)の家族なども立ち会って「全員で同時」に入れば、さらに理想です(疑われることがなくなります)。

②…現場検証(警察が事件性の有無を判断)

現場検証

警察とともに立ち入り、孤独死が確認された場合には、警察がそのまま現場検証を開始します。このとき重要なのは、近隣住民に騒ぎがバレないようにすることです。

大家でも遺族でも重要

この対応は、大家さんはもちろん、遺族の方も重要になります。大家さんについては「物件の価値が下がると困る」ということで、言うまでもないでしょう。

遺族の方については、下の理由で必要になります。

  • 物件価値が下がったら、大家に「訴えられる」恐れがある
  • 判例では「遺族側が勝つ」ことが多いが、面倒なのは確か
  • 最初から大家と険悪にならない方が、当然いい

ということです。そもそも衆人環視の中で警察の現場検証に立ち会うというのは、誰にとっても嫌なものでしょう。そのため、ショックを受けている状態でも、余裕のある範囲で「周囲に騒がれない対応」を心がけるようにしてください。

(遺族の方では難しいので、これは特に大家さんが意識すべきかと思います)

警察に「普通の車両」で来てもらうこともできる

こうした事件が一番バレやすいのは「パトカー」が来ることです。そのため、賃貸物件の管理会社やベテランの大家さんなどは、通報の段階で警察に対して「普通の車で来る」ことを頼むことが多くあります。

たとえば「グレーのミニバン」などですが、警察側がOKしてくれれば、このような車で来てもらえます。OKをもらえるかは、そのときの警察側の事情もありますし、地域や警察署ごとのルールも影響するものです。

そのため、あくまで「OKをもらえれば」という前提ですが、頼まないよりは頼む方が断然いいでしょう。ごく自然な要望であって、警察に対して失礼ということもないためです。

死因特定からの流れ

警察が現場検証ですることは、主に「死因の特定」です。というのは「ただの孤独死」だったら、それで捜査は終わるためです。

逆に「殺人の疑いあり」となったら、それから「殺人事件」としての調査が本格的に始まります。そのため、最初の仕事が「死因の特定」となるのです。

もし死因が特定できない場合、特定するために「死体検案」をします。アパートの部屋などではできないため、警察の霊安室などに運ばれます。

③…室内確認(警察捜査終了後、大家&遺族で)

警察調査

死因が特定されたら「警察の捜査は終わり」です。そのため、そうなれば部屋の片付けをしてもかまいません。

しかし、特定されないうちは事件の可能性があるため、部屋の片付けはできません。警察が室内の状況確認を完全に終え「片付けてもいい」という許可が出たら、初めて片付けます。

大抵、翌日には片付けをできる

実は、日本の殺人件数は「年間300件未満」です。下の「社会実情データ図録」などのデータでわかります。

2016年は、(多分、日本史上)はじめて、他殺者数が300人を切った。
他殺による死亡者数の推移

間違いではなく本当に「300件未満」で、togetterまとめでも「日本人の深刻な殺人離れ」などと、明るいジョークが飛び交っています。

このくらい殺人事件は少ないので、ほとんどのケースでは「事件性なし」と判断されます。そして、翌日には部屋の片付けもできるようになります。

あなたが大家さんであれば、警察の調査当日は「遺族の連絡先だけ」聞いておき、翌日以降に部屋の明け渡しや解約のことなどを、話すようにしましょう。

④…明渡し手続き(賃貸契約の解除)

明け渡し

入居者が孤独死をしただけでは、賃貸契約は終わりません。

  • 部屋を借りるのも一つの「権利」である
  • 権利は相続される
  • つまり、子供などが「部屋を引き続き借りる権利」を持つ
  • 住みたければ、そのまま住んでもいい

ということです。まずないことですが「親が孤独死した物件が気に入った」といって、お子さんが翌日から住んでもいいのです。

通常はそのまま解約手続きに入る

上のようなルールはあるものの、通常は相続人も解約を希望します。そのため、お互いに「解約」の手続きをするのですが、大家さんの側は下の点を把握する必要があります。

  • 法定相続人は誰か
  • 今後の連絡は誰にすべきか
  • 部屋をいつまでに明け渡してくれるか

原状回復の話などもありますが、一番重要なのは「部屋がいつ空くか」でしょう。遺族としても「無駄な家賃は払いたくない」はずです。このため、お互いに「大体の時期を決める」必要があります。

原状回復費用の請求で、難航することが多い

解約自体は、ほとんどの遺族がすぐに応じてくれます。しかし、難航するのは「原状回復の費用をどうするか」です。

過去の判例を見ると、支払い自体は「遺族がする」ことになります。しかし、「いくらまで支払うか」という点で意見が対立するわけです。

そのため、この話し合いは少々難航することもあります。孤独死発生後の手続きの中では、ご遺族・大家さんの両方が「もっとも消耗する」場面ともいえるでしょう。

連帯保証人にも連絡をとっておく

支払い義務は、第一に相続人にあります。しかし、相続人が払えない場合は、連帯保証人に義務が移ります。

そのため、この段階で連帯保証人にも連絡をとっておきましょう。後々請求することがあってもなくても、連絡は早めにしておく方が良いものです。

⑤…原状回復の交渉(損害賠償含む)

話し合い

原状回復については、高確率で認められます(遺族に払ってもらえます)。ただ、家賃下落や空室などの「逸失利益」の損害賠償については、通らないことが多いと考えてください(過去の判例を見る限り)。

ただ、判例では否定されていても「当の遺族の方などがOKしてくれるなら、支払ってもらえる」わけです。そのため、交渉自体は試みる価値があるでしょう。

逆にあなたが遺族側であれば「損害賠償については、裁判までもつれ込んだとしても払わなくていい」(可能性が高い)と考えてください。

生活保護の孤独死で原状回復費用は誰が出す?

和室

「普通の入居者」であれば、孤独死の原状回復費用は「家族」が出してくれるものです(正確には相続人)。

同じように、生活保護の受給者であれば「役所が出してくれるのでは?」と思う人も多いでしょう。しかし、役所は出してくれません。

行政依頼の入居者…役所が負担

生活保護者の場合「行政の依頼で入居させた」というケースもあるでしょう。このような場合、原状回復の費用は「役所が全額出してくれる」というケースも多くなります。たとえば、下記の体験談(質問者さんによる回答への返信)でもわかります。

有難うございます。
残置物撤去含め、行政負担になりました。
助かりました。
生活保護者がアパートで死亡した場合の経済的負担は誰がするのか教えてください。

「残置物撤去」とは、要するに遺品整理のことですが、原状回復も遺品整理も、すべての費用を行政が持ってくれたということです。

すべての役所がこのような対応をしてくれるかはわかりません。しかし、そうしてもらえる可能性は高いでしょう。

それ以外の入居者…役所は負担しない

役所

上の説明とは逆に「普通の入居者」だった場合、役所は原状回復の費用を出してくれません。もちろん、遺品整理の費用も同じです。

  • 確かに「生活保護」のお金は支払っていた
  • しかし、それだけでも十分な「市民に対する支援」である
  • それ以上の支援をする義務はない

ということです。そもそも役所が生活保護をするのは、憲法25条の「健康で文化的な最低限の生活」を保証するためです。亡くなった後の原状回復はそれとは関係ないので、支援する必要がないのです。

自治体によっては火葬費用(数万円)をとられる

場合によっては、故人が持っていた現金などから「火葬費用」をとられることもあります。たとえば東京23区なら3万~6万円程度の火葬費用がかかるためです。

火葬は役所がしてくれるのですが「そのお金は、できるだけ故人から回収しますよ」ということですね。ちなみに、秋田市の「秋田市斎場」なら、市民は一体まで無料です。

【参考】秋田市斎場(秋田市)

こうした自治体であれば火葬費用は取られない可能性が高いでしょう。しかし、東京23区のような場所であれば、取られる可能性があります。

大家も「家賃」で利益を得ていたはず

家賃

役所がこのようにサポートしてくれないのは、そもそも「大家も家賃で利益を得ていた」と考えるためです。実際そうでしょう。利益が何もないなら、入居を断る大家さんがほとんどのはずです。

もちろん、中には「生活保護だからボランティア半分で入居させる」というケースもあるでしょう。それが「行政の依頼」であれば、先に書いた通り「行政も払ってくれる」のです。

行政の依頼でなければ「本当にボランティアかわからない」

行政の依頼でなく「自主的に入居させていた」という場合、本当にボランティア(善意)でやっていたのかわかりません。実際、生活保護者を入居させて搾取する「貧困ビジネス」が大きな問題になっているほどです。

【参考】生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体(東洋経済オンライン)

このような事例が数多くあるため「生活保護者を入居させる大家=善人」とは限らないのです。最悪の場合、

  • 入居者をわざと衰弱させて孤独死させる
  • それで原状回復費用を役所に出させる
  • 「無料でリフォーム」をする

ということも考えられます。貧困ビジネスを展開する反社会勢力の人々(ヤクザ・暴力団)であれば、このくらいのことは「普通にやりかねない」ものです。

こうした背景を考えると「行政がお金を出さない」のは、しごく真っ当な判断といえるでしょう。

生活保護にはリスクが付きもの

高齢者

賃貸経営をしている方であれば、そもそも「高齢者の入居」でもリスクが高いことを、十二分に理解しているでしょう。生活保護受給者は高齢者とは限りません。しかし「孤独死のリスクが比較的高い」ことは間違いないものです。

そのようにリスクがある入居者を受け入れる段階で「最悪の事態」も想定しておかなければなりません。「ボランティアの気持ちだった」にしても、

  • 「ボランティアだから絶対安全が保証される」ことはない
  • むしろ海外ボランティアなどは、リスクが高い
  • そもそも、家賃という利益も得ていた

ということを考えると、やはり「諦めて自分で原状回復費用を出すしかない」といえます。この費用は「賃貸経営の勉強代」と考えるべきでしょう。賃貸でもその他の分野の事業でも、成功している人も「多額の勉強代=損失」を払ってきたものです。

「空室でなかった」ことの利益

人が入居することの利益は、家賃だけではありません。「人が住んで使っていた」ということ自体が、ある程度の利益になるのです。

  • その人が変な人でなければ、防犯効果があった
  • 排水管や受水槽に水を流す効果もあった
  • 冬は、その人がつける暖房が隣室を温める効果もあった

【参考】なぜ、アパートは暖かいのですか? 築5年の実家は寒く、築13年のアパートは暖かいです。(Yahoo!JAPAN不動産)

このように、建物は「人が住んでいるだけ」でも、それなりのメリットがあるのです。「家に灯がともる」というのは、どの国でも良い意味で使われる言葉です。

故人もそのように「灯をともしてくれていた」わけですから、そのメリットも見るべきといえるでしょう。

保証会社の補償範囲に含まれることも

保証会社

生活保護受給者でも、保証会社が付いていることがあります。その保証会社のサービス内容に「孤独死による原状回復の補償」も含まれていたら、そのサービスによって費用を出してもらえます。

生活保護受給者に保証会社は付くのか?

大家さんなら知っているでしょうが、一般の人だと「生活保護の受給者に保証会社など付くのか?」と思うかもしれません。しかし、一定の割合で付くのです。

理由は、生活保護は国が必ず払ってくれるお金であり、安定しているためです。たとえば「振り込まれてすぐ引き落とせる日付」に支払日を設定すれば、取りはぐれはありません。

このような理由から、割合は多少低いものの、生活保護受給者でも保証会社はつきます。そして、そのサービス内容で補償されるなら、そこから払ってもらうことも可能、ということです。

孤独死の原状回復費用に関する3つの判例

裁判

孤独死の原状回復費用について「遺族が支払義務を持つ」という考えは、実は絶対ではありません。法律の専門家の間でも「遺族が払う必要はない」という考え方もあるのです。

ここでは、過去の判例を分析した弁護士さんの見方を紹介させていただきます。参考元は下記の「三井住友トラスト不動産」のページです。

【参考】相続人に原状回復費用の請求ができるか?孤独死して遺体発見が遅れた場合の原状回復費用の負担者

以下、それぞれの判例の詳しい解説です。

昭和58年「遺族に支払義務がある」とされた判例

弁護士

1つ目の判例は「遺族に原状回復費の支払い義務がある」とされた事例です。

日付 昭和58年6月27日
裁判所 東京地方裁判所(東京地裁)

以下、この判例を詳しく解説します。

原状回復費用を「遺族が支払うこと」になった理由

要点をまとめると、

  • どんな理由であろうと、
  • 賃貸が終了するときの原状回復は、
  • 借り手の義務である

というものです。そして、その借り手が孤独死してしまった以上、「遺族が支払うべき」というものです。

これは現代でも通じるのか?

参考元の弁護士さんは「現代では通用しない可能性がある」としています。つまり、同じ裁判が現代で起きたら「遺族に支払い義務はない」という可能性がある、ということです。「大家の支払い」になるわけですね。

それはなぜか?

昭和58年(1983年)当時と違い、現代での原状回復義務は、借り手側が守られるようになっているためです。

  • 借り手が「故意」に汚したのでなければ義務はない
  • 孤独死・突然死は「故意」ではない
  • だから、義務はない

という考え方です。これ自体は他の部分でも書いていますが、やはりこの判例でも「同じ結論になるのではないか」「現代では大家側が負けるのではないか」ということです。

平成29年「遺族が勝てた可能性のある」判例

裁判所

2つ目にご紹介するのは「遺族が勝っていたかもしれない」=「払わずに済んだかもしれない」事例です。平成29年と新しいものです。

日付 平成29年9月15日
裁判所 東京地方裁判所(東京地裁)

この判例では遺族が負けて支払うことになりました。しかし、その理由を見ると「争い方によっては勝っていたかもしれない」といえます。

遺族側が支払うことになった理由

これは下のとおりです。

  • 遺族が「相続放棄」しか主張しなかった
  • 「故意ではない」という主張はしなかった
  • そして、相続放棄の期限が過ぎていた

つまり、遺族が下のようにしていたら、逆転していた可能性があります。

  • 相続放棄を期限内にする(3カ月以内)
  • 相続放棄でなく「故意でない」ことを主張する

もちろん「両方」だったら最強です。逆にいうと、このケースで遺族側は「2つも大きなミスをしていた」のです。

裁判所は「故意ではない」を考慮しなかったのか?

これは当然「気づいていた」でしょう。しかし、

  • 民事訴訟では「実際に訴えられたこと」しか、扱ってはいけない
  • そのため、気づいていても「言及できなかった」
  • 相続放棄だけなら、大家の言い分が正しかった
  • しかも期限が過ぎていた

ということで、大家側が勝ったわけです。遺族側が「故意でなければ支払わなくていい」というルールを知らなかったために起きた「悲劇」といえます。

(もちろん、実際の状況は「大家さんの方が悲劇」だったかもしれませんが、あえてわかりやすく説明すると)

「相続放棄の期限」とは?

これは「熟慮期間」というもので、3カ月です。民法第915条で規定されています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
民法第915条(Wikibooks)

これは申請によって延長もできるのですが、その申請は期限内に(3カ月以内に)行う必要があります。要は「3カ月以内に、何かしなくてはいけない」わけです。

平成13年「殺人は支払義務なし」という判例

事件

3つ目の判例は「殺人事件」のものです。一見孤独死と遠いようですが、わざと死んだわけではないという点では共通します。

結論を書くと、この事例では「遺族に賠償義務なし」とされました。「故意でなければ賠償義務がない」という点で、「孤独死でも遺族の賠償義務はない」という主張に用いられる判例です。

日付 平成13年1月31日
裁判所 東京高等裁判所(東京高裁)

以下、詳しく説明します。

遺族側に支払義務が「ない」とされた理由

この判決では、下の理由で「遺族側が支払う必要はない」とされました。

  • 故人は病死でなく「刺殺」された
  • 明らかに故人の過失・故意ではなかった

というものです。もちろん「殺されるような悪いことをした」という可能性はあります。ただ、

  • それは刑事事件で「別に裁かれる」ものである
  • ここでは民事で「原状回復」の義務だけを争っている
  • それについては、故人は悪くない(たとえ犯罪者であっても)

ということです。どれだけ悪い犯罪者であっても「殺されたかったはずはない」=「自分の血で部屋を汚したかったはずはない」ということです。この理論は、誰でも納得できるでしょう。

補足「事故物件にされたこと」については、別途争える

裁判所

補足すると、もし故人が「悪人」だった場合、大家さんは「事故物件にされたこと」については別途争うことができます。

  • 故人は、殺害されるほどの悪事を働いた
  • それにより、うちの物件まで「事故物件」となった
  • そのせいで、入居者が減るなどの打撃を受けた
  • その損害賠償を求める

という訴えです。もし故人が悪い人であったなら、このように争える可能性はあります。

※なお、この判例の故人はおそらく善人の方だったと思われます。善人の方であればあらゆる賠償義務がないのは明白なので、ここではあえて「万が一、悪人だったとしたら」というケーススタディとして、例を書かせていただきました。

この考えはおそらく、病死でも適用できる

参考元の弁護士さんの見方では「この考え方は、殺人事件だけでなく病死でも適用できる」ということです。故人が「死ぬつもりはなかった」のは共通だからです。

もちろん、病死の方が「予想できた可能性は高い」ものです。その「予想できた度合い」によりますが、この判例が「かなり強力な参考」になるのは間違いないでしょう。

まとめ

リフォーム

孤独死の原状回復費用は「そもそも支払義務があるか」というところから始まり、「どう原状回復をするか」によっても、金額が大きく変わります。このため、

  • 支払義務を明確にできる知識のある業者
  • 原状回復を安値かつ高品質でできる業者

を探し出すことが必要といえます。当サイトで紹介する遺品整理業者も含め、上のような条件を満たす優れた業者を探していただけたらと思います。